古文の係り結びとは何か
古文を勉強していると必ず出会うのが「係り結び」です。この係り結びは、古文特有の文法ルールで、現代語にはない独特の表現方法なんです。簡単に言うと、文の途中に特別な言葉(係助詞)が出てきたら、文末の形が決まるという約束事のこと。例えば「ぞ」という言葉が出てきたら、文末は必ず「連体形」で終わるんです。この仕組みを理解すると、古文の文章がぐっと読みやすくなります。定期テストでも入試でも頻出なので、しっかりマスターしておきましょう。
係り結びの基本的な意味
係り結びとは、文の中にある係助詞という特別な助詞が、文末の活用形を決定するという古文独特の文法規則です。
係助詞には5つの種類があります。
- ぞ(強調)
- なむ(強調)
- や(疑問・反語)
- か(疑問・反語)
- こそ(強調)
これらの係助詞が文中に現れると、文末の動詞や形容詞などの活用形が自動的に決まります。「ぞ・なむ・や・か」の4つが出てきたら文末は連体形、「こそ」が出てきたら文末は已然形になるんです。
現代語では「本を読む」「本を読んだ」のように、文末は自由に決められます。でも古文では、途中に「ぞ」などが入ると、文末の形が強制的に変わってしまうんですね。この不思議なルールが係り結びの基本です。係助詞を「係る」、文末を「結び」と呼ぶので、合わせて「係り結び」という名前がついています。文の途中と文末が呼応する、つまり連動しているというイメージを持つと理解しやすいでしょう。
なぜ係り結びが重要なのか
係り結びが重要な理由は大きく分けて3つあります。
まず1つ目は、文の意味を正しく理解するためです。係り結びには強調や疑問・反語の意味が含まれています。例えば「桜ぞ美しき」という文なら、「ぞ」があることで「桜こそが美しい」という強調の意味になります。係り結びを見逃すと、この大切な強調のニュアンスを読み取れません。
2つ目は、文の切れ目を判断するためです。古文には句読点がありません。だから、どこで文が終わるのかを判断するのが難しいんです。でも係り結びのルールを知っていれば、係助詞が出てきたら「この文は連体形で終わるはずだ」と予測できます。すると文の区切りが分かりやすくなるんですね。
3つ目は、定期テストや入試で必ず問われるからです。係り結びは古文文法の中でも特に重要な単元として扱われます。「傍線部の係り結びの結びの語を抜き出しなさい」「係助詞を含む文を現代語訳しなさい」といった問題は定番中の定番。早稲田大学や同志社大学などの難関私大でも、係り結びの理解を問う問題が毎年のように出題されています。だからこそ、係り結びをしっかり理解することは古文学習の基礎中の基礎なんです。
係り結びと現代語の違い
係り結びは古文にしかない独特のルールです。現代語との違いを理解すると、係り結びの本質がよく分かります。
現代語では、文末の形は基本的に自由です。「私は学校に行く」「私は学校に行った」「私は学校に行くだろう」のように、話者が伝えたい時制や様子に応じて自由に文末を選べます。文の途中に特定の言葉があるからといって、文末の形が強制的に決まることはありません。
ところが古文では、係助詞が出てきた瞬間に文末の形が自動的に確定してしまいます。例えば現代語で「桜が美しい」と言いたい場合、「桜は美しい」「桜が美しい」「桜こそ美しい」など、いろいろな表現ができます。でも古文で「桜ぞ美し」と書いた瞬間、文末は必ず連体形の「美しき」にしなければなりません。「桜ぞ美し」とは書けないんです。
また、現代語の「こそ」と古文の「こそ」も大きく違います。現代語では「今日こそは頑張る」のように「こそ」を使っても、文末は普通の形のままです。でも古文では「今日こそ頑張れ」のように、必ず已然形で終わらなければなりません。
このように、係り結びは現代の日本語感覚では理解しにくい独特のルールなんです。だからこそ、最初は戸惑うかもしれません。でも、パターンさえ覚えてしまえば、むしろ文末の形を予測できるので便利な面もあります。係り結びは現代語との違いを意識しながら学習すると、理解が深まります。
係り結びの基本パターン5つ
係り結びには5つの基本パターンがあります。これを完璧に覚えることが、係り結びマスターへの第一歩です。パターンは大きく2種類に分かれていて、「ぞ・なむ・や・か」の4つが連体形で結ぶパターンと、「こそ」だけが已然形で結ぶパターンです。特に「こそ」は他と違う動きをするので要注意。この5つのパターンをしっかり頭に入れておけば、どんな古文の文章でも係り結びを見抜けるようになります。それぞれのパターンの特徴と使い方を、具体例とともに見ていきましょう。
「ぞ・なむ・や・か」+連体形の係り結び
まず覚えるべきは、「ぞ・なむ・や・か」が出てきたら文末は連体形というパターンです。この4つの係助詞は仲間なので、まとめて覚えましょう。
「ぞ」と「なむ」は強調の意味を持ちます。例文を見てみましょう。
「花ぞ咲ける」→「花こそが咲いている」(強調)
「君なむ来たる」→「あなたこそが来た」(強調)
どちらも文末が連体形(咲ける、来たる)になっていますね。「咲けり」「来たり」という終止形ではなく、連体形で終わっているのがポイントです。
「や」と「か」は疑問や反語の意味を持ちます。
「これや夢なる」→「これは夢なのだろうか」(疑問)
「誰か知る」→「誰が知っているだろうか、いや誰も知らない」(反語)
これらも文末が連体形になっています。特に「や」「か」は、文脈によって疑問なのか反語なのかを判断する必要があります。反語の場合は「〜だろうか、いや〜ない」という否定の意味になるんです。
連体形の見分け方のコツは、体言(名詞)に続く形だと覚えることです。「咲ける花」「来たる人」のように、名詞の前に置ける形が連体形。だから係り結びでも、文末を連体形にすることで、後ろに省略された言葉があるかのような響きを作り出しているんですね。
東京大学や京都大学の入試問題でも、この4つの係助詞を使った係り結びはよく出題されます。河合塾や駿台予備学校の模試でも頻出単元なので、確実にマスターしておきましょう。
「こそ」+已然形の係り結び
係り結びの中で最も特殊なのが「こそ」です。「こそ」だけは他の4つと違って、文末が已然形になります。
「こそ」は非常に強い強調の意味を持つ係助詞です。例文を見てみましょう。
「今こそ見れ」→「今こそ見よ」(強い強調)
「春こそ来にけれ」→「春こそが来た」(強い強調)
「見れ」は「見る」の已然形、「来にけれ」は「来にけり」の已然形です。終止形なら「見る」「来にけり」となるところが、「こそ」があるために已然形「見れ」「来にけれ」に変わっているんですね。
已然形の見分け方は、「〜ば」「〜ども」などの接続助詞に続く形だと覚えましょう。「見れば」「来にけれども」のように、仮定や逆接の接続に使われる形です。
「こそ」を使った係り結びは、逆接の「が」「けれど」という意味で次の文に続くこともあります。
「命こそ惜しけれ、名こそ惜しけれ」→「命は惜しいが、名誉も惜しい」
このように「こそ〜已然形」の後に逆接が続くパターンは、『平家物語』や『徒然草』などの古典作品でよく見られます。慶應義塾大学や上智大学の入試でも、この「こそ」の用法を問う問題が出題されています。
「こそ」は他の4つと違う動きをするので、最初は混乱するかもしれません。でも「こそは特別」「こそだけ已然形」と呪文のように覚えてしまえば大丈夫です。
係り結びが成立しない場合
係助詞があっても、必ず係り結びが成立するとは限りません。係り結びが成立しない場合も知っておく必要があります。
最も重要なのは係り結びの流れ(消滅)です。係助詞があっても、その文の中で以下のような場合には係り結びが成立しません。
- 文の途中に句点「。」がある場合
- 引用の「と」がある場合
- 文が途中で切れている場合
具体例を見てみましょう。
「花ぞ咲く。鳥も鳴く」→ここでは「ぞ」の後に句点があるので、係り結びは成立しません。「咲く」は終止形のままです。
「これや夢と思ふ」→「と」という引用の助詞で文が区切られているので、「や」の係り結びは成立しません。
また、係助詞が名詞に付いている場合も、文末の活用形には影響しません。
「春なむ、花咲く」→この「なむ」は名詞「春」についているだけなので、「咲く」は終止形のままです。係り結びが成立するのは、係助詞が用言(動詞や形容詞)や他の助詞に続く場合だけなんです。
さらに、会話文や和歌の中では、係り結びのルールが緩くなることもあります。特に和歌では、音数を合わせるために、あえて係り結びを成立させないこともあるんですね。
このような例外パターンを知っておくと、「係助詞があるのに文末が連体形じゃない」という文に出会っても慌てずに済みます。関西大学や立命館大学の入試でも、この係り結びの流れを問う問題が出ることがあるので、注意が必要です。
係り結びの省略パターン
古文では、係り結びの結びの部分が省略されることもあります。これを「係り結びの省略」または「結びの省略」と呼びます。
結びの省略が起こるのは、主に以下のような場合です。
- 会話文で相手の発言を受けて答える時
- 感動や詠嘆を表す時
- 文の勢いで言い切ってしまう時
具体例を見てみましょう。
「誰ぞ」→「誰か」(誰なのか)
「いかにぞ」→「どうなのか」
これらは本来「誰ぞある」「いかにぞある」のように結びの語があるべきなのですが、省略されています。でも意味は十分通じますよね。
また、詠嘆の表現でもよく省略が起こります。
「あはれなるかな」→「ああ、しみじみとしたことだなあ」
この「かな」は詠嘆の終助詞ですが、本来の係り結びの結びの語が省略されているとも考えられます。
結びの省略は、口語的な表現や感情的な表現でよく見られます。『源氏物語』や『枕草子』などの平安文学では、登場人物の会話文で頻繁に結びの省略が使われています。
ただし、定期テストや入試問題では、結びの省略がある文を「係り結びを含む文」として扱わないこともあります。問題文をよく読んで、何を答えればいいのかを確認することが大切です。
このような省略パターンも含めて理解しておくと、古文の読解力がさらに高まります。東進ハイスクールや代々木ゼミナールの古文講座でも、この結びの省略は重要ポイントとして扱われています。
係り結びの見つけ方とコツ
係り結びのルールを知っていても、実際の文章の中で正確に見つけられなければ意味がありません。ここでは、古文を読みながら係り結びをすばやく正確に見つける実践的なコツをお伝えします。係り結びを見つける基本は、まず係助詞を見逃さないこと、そして結びの語を正確に特定することの2ステップです。この2つができれば、どんなに長い文章でも係り結びを見抜けるようになります。さらに、文の切れ目を判断する方法や、よくある間違いとその対策も紹介します。これらのコツを身につければ、定期テストでも入試でも自信を持って答えられるようになるでしょう。
係助詞を見逃さない方法
係り結びを見つける第一歩は、係助詞を見逃さないことです。そのためには、古文を読む時に常に「ぞ・なむ・や・か・こそ」の5つを意識することが大切です。
効果的な方法は、古文を読みながら係助詞に印をつける習慣をつけることです。例えば、係助詞を見つけたら丸で囲む、あるいは蛍光ペンでマークするといった方法です。こうすることで、その文では係り結びが発生していることが一目で分かります。
特に注意すべきは「なむ」です。「なむ」には3つの使い方があります。
- 係助詞の「なむ」(係り結びを作る)
- 完了の助動詞「ぬ」+推量の助動詞「む」が縮まった「なむ」
- 願望を表す終助詞「なむ」
これらを見分けるには、文末を確認することが重要です。文末が連体形になっていれば、それは係助詞の「なむ」です。文末が終止形や他の形なら、助動詞か終助詞の「なむ」だと判断できます。
また、「や」と「か」も要注意です。これらは疑問の終助詞としても使われるので、係助詞なのか終助詞なのかを見極める必要があります。見極めのポイントは位置です。文末にあれば終助詞、文の途中にあれば係助詞の可能性が高いです。
「これや夢なる」→「や」は文の途中なので係助詞
「これは夢なるや」→「や」は文末なので終助詞
さらに、文章を音読するのも効果的な方法です。音読すると、係助詞のある部分で自然と強調やリズムの変化が生まれます。声に出して読むことで、係り結びの存在を体感的に理解できるようになるんです。
明治大学や青山学院大学の入試問題では、複雑な文章の中から係助詞を見つけ出す力が試されます。日頃から係助詞を意識して読む練習をしておきましょう。
結びの語を正確に特定する手順
係助詞を見つけたら、次は結びの語を正確に特定するステップに進みます。結びの語とは、係り結びによって活用形が決定された文末の用言のことです。
結びの語を見つける手順は以下の通りです。
ステップ1:係助詞から後ろを注意深く読む
係助詞を見つけたら、そこから文末までを意識的に追いかけます。途中で文が終わっていないか、引用の「と」がないかを確認しましょう。
ステップ2:文末の用言を探す
文の一番最後にある動詞、形容詞、形容動詞、助動詞を見つけます。これが結びの語の候補です。
ステップ3:その用言の活用形を確認する
見つけた用言が、本当に連体形や已然形になっているかを確認します。「ぞ・なむ・や・か」なら連体形、「こそ」なら已然形になっているはずです。
具体例で見てみましょう。
「花ぞ美しかりける」
ステップ1:「ぞ」を見つける
ステップ2:文末の「ける」を見つける(「けり」の連体形)
ステップ3:「ける」は連体形なので、係り結びが成立している
ただし、注意点があります。助動詞が複数重なっている場合は、一番最後の助動詞が結びの語になります。
「花ぞ咲きにけらし」→「けらし」の「らし」が推量の助動詞で、これが連体形
また、形容詞や形容動詞の場合も、語幹と語尾をしっかり区別することが大切です。
「これや美しき」→「美しき」は「美し」(形容詞の語幹)+「き」(連体形の語尾)
結びの語を正確に特定することは、係り結びの理解の証明になります。中央大学や法政大学の入試では、「結びの語を5文字で抜き出しなさい」といった具体的な問題が出されることもあります。普段の学習から、結びの語を正確に見つける訓練をしておきましょう。
文の切れ目の判断方法
古文には現代文のような句読点がないため、文の切れ目を判断するのが難しいという問題があります。でも、係り結びを理解していると、文の切れ目が見えてくるんです。
係り結びを使った文の切れ目判断の基本ルールは、係助詞があったら、その結びの語まで一つの文ということです。
「花ぞ咲ける鳥も鳴く」
この文は、「花ぞ咲ける」(一つの文)と「鳥も鳴く」(別の文)に分かれます。「ぞ」があるので「咲ける」まで一つのまとまりだと分かるんですね。
逆に、係り結びが途中で切れている場合は、そこまでで文が終わっていると判断できます。
「花ぞ咲く。鳥も鳴く。」
この場合、「ぞ」の後に句点があるので、係り結びは成立していません。「花ぞ咲く」で一つの文が終わっています。
また、引用の「と」も文の区切りの目印になります。
「これや夢と思ふ」
「これや夢」までが引用部分、「思ふ」が主文です。「と」で引用が終わっているので、係り結びは成立していません。
文の切れ目を判断する時のコツは、以下のポイントに注目することです。
- 係助詞を見つけたら、結びの語まで追いかける
- 接続助詞(ば、ど、ども、を、に、て、など)に注目する
- 助詞「と」「とて」があれば、そこで引用が終わっている
- 敬語の対象が変わったら、文が変わっている可能性が高い
定期テストでよく出る問題に「この文の係り結びの結びの語はどれか」というものがあります。文の切れ目が分からないと、結びの語も特定できません。だからこそ、文の切れ目を正確に判断する力は、係り結び理解の要なんです。
立教大学や学習院大学の入試問題でも、長文の中から係り結びの範囲を正確に把握する問題が出題されます。普段から文の切れ目を意識して読む練習をしておきましょう。
よくある間違いと対策
係り結びでよくある間違いパターンを知っておくと、ミスを防げます。ここでは、代表的な3つの間違いとその対策を紹介します。
間違い1:「なむ」を全て係助詞だと思ってしまう
すでに説明したように、「なむ」には係助詞、助動詞、終助詞の3つの用法があります。文末が連体形になっていない場合は、係助詞ではありません。
対策:文末の活用形を必ず確認する習慣をつけましょう。
間違い2:係助詞を見つけても、結びの語を途中で止めてしまう
長い文では、係助詞のすぐ後ろにある用言を結びの語だと勘違いしてしまうことがあります。
「花ぞ庭に美しく咲きたる」
この文では「咲きたる」が結びの語です。途中の「美しく」(連用形)ではありません。
対策:係助詞を見つけたら、必ず文末まで読んでから結びの語を確認しましょう。
間違い3:「こそ」の結びを連体形だと思ってしまう
「こそ」は他の4つとパターンが違うのに、つい連体形を探してしまう間違いです。
対策:「こそは特別、こそだけ已然形」と何度も唱えて体に覚え込ませましょう。
その他にも、以下のような間違いがよくあります。
- 係り結びの流れ(消滅)を見逃す
- 複数の係り結びが重なっている時に混乱する
- 挿入句があると、どこまでが一つの文か分からなくなる
これらのミスを防ぐには、問題演習を繰り返すことが一番の対策です。教科書や問題集の例文を使って、係助詞を見つけ、結びの語を特定する練習を毎日コツコツ続けましょう。
また、自分がよく間違えるパターンをノートにまとめるのも効果的です。間違いを分析して、次に同じミスをしないように対策を立てることが、確実な上達への道です。
河合塾の全統模試や駿台の全国模試でも、係り結びは必ず出題されます。模試の復習をする時も、係り結びの問題は特に丁寧に見直して、自分の弱点を把握しておきましょう。
係り結びの訳し方のポイント
係り結びを見つけられるようになったら、次は正しく訳す力が必要です。係り結びには、強調や疑問・反語といった特別な意味が込められています。これを適切に日本語で表現できるかどうかが、定期テストや入試での得点を左右します。ただし、必ずしも係り結びの意味を訳出する必要があるわけではありません。文脈によっては、訳さない方が自然な場合もあるんです。ここでは、強調の訳し方、疑問・反語の訳し方、そして訳出しなくてもよい場合について、具体例を交えながら詳しく解説します。定期テストで点を取るための実践的なコツもお伝えしますので、しっかり身につけてください。
強調の訳し方
「ぞ」「なむ」「こそ」は強調の意味を持つ係助詞です。これらを訳す時は、強調のニュアンスを日本語で表現する必要があります。
基本的な強調の訳し方には、以下のようなパターンがあります。
- 「〜こそ」「まさに〜」
- 「〜なのだ」「〜のである」
- 「本当に〜」「実に〜」
- 係助詞が付いた語を強調して訳す
具体例で見てみましょう。
「花ぞ美しき」→「花こそが美しい」「花が本当に美しい」「花がまさに美しい」
「ぞ」を「こそ」と訳すのが最も一般的です。ただし、「花が美しいのだ」のように、文末に「のだ」をつけて強調を表すこともできます。
「君なむ来たる」→「あなたこそが来た」「あなたが本当に来た」
「なむ」も「ぞ」と同じように訳します。どちらも強調の度合いは同じくらいです。
「こそ」の場合は、最も強い強調なので、訳も強めにします。
「今こそ見れ」→「今こそ見よ」「まさに今見よ」
「こそ」は他の係助詞よりも強調の度合いが強いので、「まさに」「本当に」などの言葉を使って、その強さを表現しましょう。
また、強調の対象となる語を「〜が」「〜こそが」のように格助詞で明確にするのも効果的です。
「春ぞ来にける」→「春こそが来たのだ」
このように、係助詞がついている語(この場合「春」)を強調することで、原文のニュアンスが伝わりやすくなります。
ただし、定期テストでは「こそ」を使って訳しなさいといった指定がある場合もあります。問題文の指示をよく読んで、求められている訳し方で答えることが重要です。
早稲田大学文学部や慶應義塾大学文学部の入試では、係り結びの強調のニュアンスを正確に訳出できるかが試されます。単に文法的に正しいだけでなく、意味的にも適切な訳を心がけましょう。
疑問・反語の訳し方
「や」「か」は疑問または反語の意味を持つ係助詞です。どちらの意味なのかは文脈で判断する必要があります。
疑問の場合は、「〜だろうか」「〜か」と訳します。
「これや夢なる」→「これは夢なのだろうか」
「誰か来たる」→「誰が来たのか」
疑問の場合は素直に疑問文として訳せばいいので、比較的簡単です。
反語の場合は、疑問の形をとりながら、実は否定の意味を表します。反語は「〜だろうか、いや〜ない」という構造で訳します。
「誰か知る」→「誰が知っているだろうか、いや誰も知らない」
反語かどうかを見分けるポイントは、以下の通りです。
- 文脈的に答えが明らかな場合(答えが否定)
- 「いかで」「など」などの反語を示す副詞がある場合
- 前後の文脈から否定の意味が自然な場合
反語の例文をもう少し見てみましょう。
「何か思はざらむ」→「何を思わないことがあろうか、いや全て思う」
「いかでか知らむ」→「どうして知ることができようか、いや知ることはできない」
反語は、強い否定や強い肯定を表す修辞技法です。単に「〜ない」と訳すよりも、反語の形で訳した方が、原文の強い感情が伝わります。
ただし、定期テストで「現代語訳しなさい」という問題の場合、反語でも普通に訳してしまう人がいます。
誤った訳:「誰か知る」→「誰が知るか」(疑問文のままで終わっている)
正しい訳:「誰か知る」→「誰が知っているだろうか、いや誰も知らない」
反語は、疑問の形で問いかけながら、その答えを否定(または肯定)することで強調する表現です。だから訳も、疑問と答えの両方を含めた形にする必要があるんです。
同志社大学や関西学院大学の入試では、「や」「か」の係り結びの訳し方、特に反語の訳し方がよく問われます。反語の見分け方と訳し方は、繰り返し練習して確実に身につけましょう。
訳出しなくてもよい場合
係り結びは、必ずしも全ての場合で訳出する必要はありません。文脈によっては訳さない方が自然なこともあるんです。
訳出しなくてもよい主なケースは以下の通りです。
ケース1:強調しても意味が変わらない場合
「花咲く」と「花ぞ咲く」は、基本的な意味は同じです。「花こそが咲く」と訳すこともできますが、単に「花が咲く」と訳しても意味は通じます。
特に、会話文や歌の中では、係り結びは語調を整えるために使われることも多く、無理に強調のニュアンスを入れると不自然になることがあります。
ケース2:複数の係り結びが連続する場合
「春こそ来にけれ、花ぞ咲きける」
この文では「こそ」と「ぞ」の2つの係助詞があります。全てを強調して訳すと、「春こそが来た、花こそが咲いた」となり、やや不自然です。この場合、一方だけを強調して訳すか、両方とも普通に訳す方が読みやすくなります。
「春が来て、花が咲いた」
ケース3:文章の流れを重視する場合
古文全体を現代語訳する時、全ての係り結びを忠実に訳すと、文章がぎこちなくなることがあります。
「月ぞ明かき。風も涼しき」→「月が明るい。風も涼しい」
この場合、「月こそが明るい」と訳すよりも、「月が明るい」と素直に訳した方が、文章全体の流れがスムーズになります。
ただし、定期テストや入試では、問題文に「係り結びの意味を明確にして訳しなさい」といった指示がある場合があります。この場合は、必ず強調や疑問・反語のニュアンスを入れて訳さなければなりません。
また、文学作品の鑑賞では、係り結びの持つ微妙なニュアンスが重要な意味を持つこともあります。例えば『源氏物語』では、登場人物の心情を表すために係り結びが効果的に使われています。
訳出するかしないかの判断基準は、以下の点を考慮して決めましょう。
- 問題文に指示があるか
- 係り結びが文章の中で重要な役割を果たしているか
- 訳出した方が意味が明確になるか
- 文章全体の流れが自然になるか
係り結びの訳し方は、正解が一つとは限りません。文脈や目的に応じて、最も適切な訳を選ぶ柔軟性が大切です。
定期テストで点を取る訳し方
ここまで係り結びの基本的な訳し方を説明してきましたが、最後に定期テストで確実に点を取るための実践的なコツをお伝えします。
コツ1:問題文の指示を必ず確認する
定期テストでは、訳し方について具体的な指示があることが多いです。
「係り結びの意味が分かるように訳しなさい」→強調や疑問・反語を明確に訳出する
「現代語訳しなさい」→指示がなければ、自然な訳でもOK
「『こそ』を使って訳しなさい」→必ず「こそ」という言葉を使う
問題文の指示に従わないと、たとえ意味が合っていても減点されることがあります。
コツ2:部分点を意識する
長文の現代語訳問題では、係り結びの訳だけで数点分の配点があることも。完璧でなくても、係り結びの意味を訳出しようとした跡が見えれば部分点がもらえる可能性があります。
コツ3:訳の型を覚えておく
以下の訳の型を覚えておくと便利です。
| 係助詞 | 基本の訳 | 使用例 |
|---|---|---|
| ぞ | 〜こそ、〜のだ | 花ぞ咲く→花こそ咲く |
| なむ | 〜こそ、〜のだ | 君なむ来たる→君こそ来た |
| こそ | まさに〜、〜こそ | 今こそ見れ→まさに今見よ |
| や | 〜だろうか | これや夢→これは夢だろうか |
| か | 〜だろうか | 誰か知る→誰が知ろうか |
この表を参考にしながら訳を作れば、大きく外れることはありません。
コツ4:反語は必ず答えまで書く
反語の訳は、「〜だろうか、いや〜ない」という形で、疑問と答えの両方を書くのが基本です。
「誰か知る」→「誰が知ろうか」だけでは不十分
「誰か知る」→「誰が知ろうか、いや誰も知らない」が正解
コツ5:過去問や問題集で練習する
係り結びの訳し方は、実践あるのみです。学校の過去問や市販の問題集(『ステップアップノート30古典文法基礎ドリル』『古文上達 基礎編』など)を使って、繰り返し練習しましょう。
特に、自分の高校の過去問は、出題傾向が分かる貴重な資料です。先輩からもらったり、先生に見せてもらったりして、どんな訳し方が求められているのかを研究しておくことをおすすめします。
東京大学や京都大学などの最難関大学では、係り結びを含む古文の精密な現代語訳が求められます。河合塾の『古文解釈の方法』や、駿台の古文講座などを活用して、高度な訳出力を養っておくと良いでしょう。
係り結びの練習問題と解説
ここまで学んだ知識を、実際の問題で試してみましょう。係り結びは、理論を理解するだけでなく、実際に問題を解いて体で覚えることが大切です。このセクションでは、基礎レベルから応用レベルまで、段階的に難易度が上がる練習問題を用意しました。それぞれの問題には詳しい解説をつけていますので、なぜその答えになるのかをしっかり理解しながら進めてください。間違えた問題は、解説を読んで納得できるまで復習することが重要です。また、大学入試での出題パターンも紹介しますので、入試対策としても活用してください。
基礎レベルの練習問題
まずは、係り結びの基本が理解できているかを確認する問題から始めましょう。
問題1
次の文の係助詞と結びの語を答えなさい。
「月ぞ明かき」
解答
係助詞:ぞ
結びの語:明かき
解説
「ぞ」は係助詞です。「明かき」は形容詞「明かし」の連体形で、結びの語になっています。「ぞ」があるので文末が連体形になっているんですね。
問題2
次の文を現代語訳しなさい。係り結びの意味が分かるように訳すこと。
「花なむ咲きたる」
解答
花こそが咲いている。
解説
「なむ」は係助詞で強調の意味があります。「咲きたる」は「咲く」+完了の助動詞「たり」の連体形です。「なむ」があるので、文末が連体形「たる」になっています。強調の意味を出すために「こそ」を使って訳します。
問題3
次の文の結びの語を、本文から5文字で抜き出しなさい。
「君こそ我を思へれ」
解答
思へれ
解説
「こそ」は係助詞で、已然形で結びます。「思へれ」は動詞「思ふ」の已然形「思へ」+完了の助動詞「り」の已然形「れ」です。「こそ」があるので、文末が已然形になっています。
問題4
次の文の「なむ」は係助詞か、それとも他の用法か答えなさい。
「花咲きなむ」
解答
係助詞ではない(完了の助動詞「ぬ」+推量の助動詞「む」)
解説
文末の「咲きなむ」の「咲き」は連用形です。係助詞の「なむ」なら文末は連体形になるはずですが、そうなっていません。したがって、この「なむ」は係助詞ではなく、完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」+推量の助動詞「む」が縮まったものです。
基礎レベルでは、まず係助詞を確実に見つけ、結びの語を正確に特定できることが目標です。この4問が全問正解できなければ、もう一度前のセクションを復習しましょう。
標準レベルの練習問題
次は、少し複雑な文での係り結びを扱います。
問題5
次の文の係り結びの結びの語を答え、現代語訳しなさい。
「誰か知らざらむ」
解答
結びの語:知らざらむ
現代語訳:誰が知らないことがあろうか、いや皆が知っている。
解説
「か」は疑問・反語の係助詞です。この文は反語なので、「誰が知らないことがあろうか、いや皆が知っている」という意味になります。「知らざらむ」は、動詞「知る」+打消の助動詞「ず」+推量の助動詞「む」の連体形です。
問題6
次の文には係り結びが含まれているか答えなさい。含まれている場合は、係助詞と結びの語を答えなさい。
「春なむ、花咲く」
解答
係り結びは含まれていない。
解説
「なむ」の後に読点があり、文末の「咲く」は終止形です。係り結びが成立するには、文末が連体形になる必要があります。この「なむ」は単に「春」を強調している終助詞です。
問題7
次の文を現代語訳しなさい。
「月ぞ出でたる空も明かき」
解答
月こそが出た空も明るい。
解説
この文には「ぞ」という係助詞があり、「出でたる」で結んでいます。その後、「空も明かき」と続いていますが、これは別の文です。「月ぞ出でたる」(月こそが出た)という一つの係り結びの文と、「空も明かき」(空も明るい)という別の文が並んでいる構造です。
問題8
次の文の係り結びを指摘し、疑問か反語かを判断して現代語訳しなさい。
「いかでか逢はむ」
解答
係助詞:か
結びの語:逢はむ
判断:反語
現代語訳:どうして逢うことができようか、いや逢うことはできない。
解説
「いかで」は「どうして」という意味の副詞で、「か」と組み合わさると反語になることが多いです。「逢はむ」は動詞「逢ふ」+推量の助動詞「む」の連体形です。
標準レベルでは、係り結びの流れや、反語の判断など、少し応用的な知識が必要になります。間違えた問題は、なぜ間違えたのかを分析して、弱点を克服しましょう。
応用レベルの練習問題
最後に、入試レベルの難しい問題にチャレンジしてみましょう。
問題9
次の文の係り結びをすべて指摘し、現代語訳しなさい。
「春こそ来にけれ、花ぞ咲きぬる」
解答
係り結び1:こそ〜来にけれ
係り結び2:ぞ〜咲きぬる
現代語訳:春こそが来た、花こそが咲いた。
解説
この文には2つの係り結びが含まれています。「こそ」は已然形の「来にけれ」で結び、「ぞ」は連体形の「咲きぬる」で結んでいます。「来にけれ」は、動詞「来」+完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」+過去の助動詞「けり」の已然形「けれ」です。「咲きぬる」は、動詞「咲く」の連用形「咲き」+完了の助動詞「ぬ」の連体形「ぬる」です。
問題10
次の文の傍線部を現代語訳しなさい。
「風の音を聞くに、いとあはれなるかな」
解答
とてもしみじみとしたことだなあ。
解説
「かな」は詠嘆の終助詞です。一見、係り結びが無いように見えますが、「か」という係助詞が含まれているとも解釈できます。ただし、ここでは結びの省略が起こっていると考えられます。「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形で、本来ならここで係り結びが完結していますが、さらに「かな」という詠嘆の終助詞が続いています。このような詠嘆表現では、係り結びの結びの語がはっきりしない場合もあります。
問題11
次の文の係り結びについて説明し、現代語訳しなさい。
「これや我が求むる人にてある」
解答
係助詞:や
結びの語:ある
現代語訳:これは私が求めている人であるのだろうか。
解説
「や」は疑問の係助詞です。「ある」は動詞「あり」の連体形です。ただし、この文では「にて」という格助詞があるため、一見すると係り結びが成立していないように見えるかもしれません。しかし、「にてある」全体で「〜である」という意味の述語になっており、最後の「ある」が連体形で係り結びの結びの語になっています。
応用レベルでは、複数の係り結びが重なる文や、複雑な助動詞・助詞の組み合わせが出てきます。このレベルの問題がスラスラ解けるようになれば、入試でも十分に戦える実力がついています。
大学入試での出題パターン
係り結びは、大学入試で非常によく出題される単元です。ここでは、実際の入試でどのような形で問われるのかを見ていきましょう。
出題パターン1:結びの語を抜き出す問題
「傍線部の係り結びの結びの語を、本文中から○文字で抜き出しなさい。」
これは最も基本的な出題形式です。早稲田大学、明治大学、中央大学など、多くの私立大学で頻出です。正確に文法を理解していれば確実に得点できる問題です。
出題パターン2:現代語訳問題
「次の文を現代語訳しなさい。係り結びの意味が分かるように訳すこと。」
係り結びを含む文の現代語訳は、京都大学、大阪大学、神戸大学などの国公立大学でよく出題されます。強調や疑問・反語の意味を正確に訳出できるかが問われます。
出題パターン3:文法説明問題
「傍線部『なむ』の文法的説明をしなさい。」
係助詞なのか、他の用法なのかを見極める問題です。上智大学、立教大学、同志社大学などで見られます。文末の活用形を確認することが解答のカギです。
出題パターン4:反語の判断問題
「傍線部は疑問か反語か、判断して現代語訳しなさい。」
「や」「か」を含む文で、疑問なのか反語なのかを文脈から判断する問題です。慶應義塾大学、早稲田大学、関西学院大学などの難関私大で出題されます。
出題パターン5:複合問題
「傍線部について、(1)係助詞を答えよ、(2)結びの語を抜き出せ、(3)現代語訳せよ」
係り結びに関する知識を総合的に問う問題です。東京大学、一橋大学、筑波大学などの最難関大学で出題されることがあります。
入試対策としては、以下の点を重点的に学習しましょう。
- 係助詞5つを確実に覚える
- 連体形と已然形の活用を完璧にする
- 「なむ」の見分け方をマスターする
- 反語の訳し方を身につける
- 過去問演習を繰り返す
また、東進ハイスクールの『古文レベル別問題集』や、河合塾の『古文入試精選問題集』などを使って、実戦的な演習を積むことをおすすめします。予備校の冬期講習や直前講習でも、係り結びは必ず扱われる重要単元です。
係り結びでつまずきやすいポイント
係り結びの基本は理解できても、実際の古文を読んでいると「あれ、これはどうなっているんだろう」と戸惑う場面が出てきます。このセクションでは、多くの受験生がつまずきやすい応用的なポイントについて解説します。係り結びの流れ(消滅)、複数の係り結びが重なる場合、挿入句がある場合、そして係り結びと敬語の組み合わせなど、少し複雑な状況での係り結びの扱い方を学びます。これらのポイントを理解すれば、難しい古文の文章でも自信を持って読み進められるようになります。入試の長文問題や、『源氏物語』『枕草子』などの古典文学を読む時にも、必ず役立つ知識です。
係り結びの流れ(消滅)について
係り結びには「流れ」または「消滅」と呼ばれる現象があります。これは、係助詞があっても係り結びが成立しない状態のことです。
係り結びの流れが起こる主なケースは以下の通りです。
ケース1:文が途中で切れている場合
「花ぞ咲く。」
係助詞「ぞ」の後に句点があり、文が終わっています。この場合、係り結びは流れて(消滅して)、「咲く」は終止形のままです。
ケース2:引用の「と」「とて」がある場合
「これや夢と思ふ」
「と」という引用の助詞で文が区切られているので、「や」の係り結びは流れます。「夢」の後で引用部分が終わり、「思ふ」は終止形です。
「美しかなるかなとて去りぬ」
「とて」で引用が終わっているので、「かな」の前で係り結びが切れています。
ケース3:挿入句がある場合
挿入句とは、文の中に別の文が挿入されている状態のことです。
「花ぞ、我が見しは、咲く」
「我が見しは」という挿入句があるため、係り結びの流れが複雑になります。この場合、「ぞ」の係り結びは挿入句の影響で弱まり、結びの語が不明瞭になることがあります。
ケース4:会話文の場合
会話文では、係り結びが必ずしも厳密に守られない場合があります。
「誰ぞ」→「誰か」(誰なのか)
本来は「誰ぞある」のように結びの語があるべきですが、会話のリズムで省略されています。
係り結びの流れは、古文が生きた言葉だった証拠でもあります。文法的には係り結びがあるべきでも、実際の会話や表現の中では、流れてしまうこともあったんですね。
定期テストや入試では、「この文に係り結びはあるか」という問題が出ることがあります。係助詞があっても、流れている場合は「係り結びは無い」と答えるのが正解です。
大阪大学や名古屋大学の入試では、係り結びの流れを理解しているかを問う問題が出題されることがあります。単に係助詞を見つけるだけでなく、本当に係り結びが成立しているかを確認する習慣をつけましょう。
複数の係り結びが重なる場合
一つの文の中に複数の係助詞が含まれることもあります。この場合、どの係助詞がどの結びの語に対応するのかを見極める必要があります。
基本的なルールは、「後ろの係助詞が先に結ぶ」というものです。
「花ぞ月こそ美しけれ」
この文には「ぞ」と「こそ」の2つの係助詞があります。後ろにある「こそ」が先に「美しけれ」(已然形)で結び、「ぞ」の結びは省略されています。
もし両方の係り結びが完全に成立する場合は、以下のような構造になります。
「花ぞ咲ける月こそ出でにけれ」
「ぞ」→「咲ける」(連体形)で結ぶ
「こそ」→「出でにけれ」(已然形)で結ぶ
このように、それぞれの係助詞が独立して結びの語を持つこともあります。
見極めのポイントは以下の通りです。
- 文末から逆順に考える
- 一番後ろの係助詞が文末で結ぶ
- 前の係助詞は途中で結ぶか、結びが省略される
- それぞれの結びの活用形を確認する
練習問題で確認してみましょう。
「君ぞ我こそ思へれ」
「こそ」が後ろにあるので、「こそ」が文末の「思へれ」(已然形)で結びます。「ぞ」の結びは省略されています。
訳:あなたを、私こそが思っている。
複数の係り結びが重なる文は、平安時代の和歌や物語でよく見られます。『古今和歌集』『伊勢物語』『源氏物語』などを読む時には、特に注意が必要です。
関西大学や立命館大学の入試でも、複数の係り結びを含む文の解釈問題が出題されることがあります。一つ一つの係助詞と結びの語を丁寧に対応させる練習をしておきましょう。
挿入句がある場合の対処法
古文では、文の途中に別の文や句が挿入されることがよくあります。挿入句があると、係り結びがどこで成立しているのか分かりにくくなります。
挿入句の代表的なパターンを見てみましょう。
パターン1:説明や補足が挿入される
「花ぞ、我が愛でしは、散りにける」
「我が愛でしは」(私が愛したものは)という説明が挿入されています。挿入句を取り除くと、「花ぞ散りにける」という係り結びが見えてきます。
パターン2:感動や詠嘆が挿入される
「月こそ、あはれなるかな、明かかりけれ」
「あはれなるかな」(しみじみとしたことだなあ)という詠嘆表現が挿入されています。本体は「月こそ明かかりけれ」です。
挿入句を見抜くコツは以下の通りです。
- 読点(、)に注目する
- 主語や述語が重複していないか確認する
- 文の流れが不自然な部分を探す
- 挿入句を括弧に入れて読んでみる
挿入句を見抜いたら、一度その部分を飛ばして読むと、文の骨格が見えてきます。
「花ぞ、(我が愛でしは)、散りにける」
→「花ぞ散りにける」が本体
この方法を使えば、複雑な文でも係り結びを正確に把握できるようになります。
挿入句は、『源氏物語』『枕草子』などの文学作品で頻繁に使われます。登場人物の心情や、作者の感想が挿入されることが多いんですね。
九州大学や北海道大学の入試でも、挿入句を含む長文が出題されることがあります。挿入句に惑わされず、文の本体を見抜く力を養っておきましょう。
実際の練習方法としては、教科書や古典作品を読む時に、挿入句と思われる部分に括弧をつけてみることをおすすめします。そうすることで、文の構造が視覚的に分かりやすくなります。
係り結びと敬語の組み合わせ
係り結びと敬語が組み合わさると、さらに文の解釈が複雑になります。でも、基本的なルールさえ押さえておけば大丈夫です。
係り結びの結びの語に敬語の補助動詞が続く場合を見てみましょう。
「帝こそおはしけれ」
「こそ」は係助詞で、已然形で結びます。「おはしけれ」は「おはす」(いらっしゃる、尊敬語)+過去の助動詞「けり」の已然形「けれ」です。全体が已然形で結んでいます。
訳:帝こそがいらっしゃった。
尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれも、係り結びの結びの語になることができます。
「君ぞ参りたまへる」(尊敬語)
「我なむ申したる」(謙譲語)
「花ぞ咲き侍る」(丁寧語)
これらの文では、敬語の動詞が連体形になって、係り結びの結びの語として機能しています。
注意すべきポイントは、敬語と係り結びの両方を同時に処理する必要があることです。
- 係り結びで活用形を判断する
- 敬語で動作の主体や対象を判断する
- 両方を組み合わせて正確に訳す
例文で確認してみましょう。
「これや大臣の仰せられたる」
「や」は疑問の係助詞、「仰せられたる」は「仰す」(おっしゃる、尊敬語)+助動詞「らる」+完了の助動詞「たり」の連体形「たる」です。
訳:これは大臣がおっしゃったことなのだろうか。
係り結びと敬語は、古文読解の二本柱です。どちらも正確に理解できないと、文の意味を取り違えてしまいます。
東京大学や一橋大学の入試では、敬語を含む係り結びの文が頻出です。『源氏物語』や『大鏡』などの古典作品には、貴族社会を描いた文章が多く、敬語と係り結びが複雑に絡み合っています。
対策としては、敬語の知識を確実に固めた上で、係り結びとの組み合わせパターンを練習することです。代々木ゼミナールの『古文読解ゴロゴ』や、東進ハイスクールの『古文単語FORMULA600』などを使って、敬語の語彙を増やすとともに、実際の文章で係り結びとの組み合わせを確認していきましょう。
また、学校の授業で『源氏物語』や『枕草子』を読む時は、係り結びと敬語の両方に注目しながら丁寧に読み進めることをおすすめします。この2つをマスターすれば、古文読解力は飛躍的に向上します。
