「春はあけぼの」と聞くと、「むずかしそう…」「どこが大事なのかわからない…」と思っていませんか? でも大丈夫!この記事では、あの有名な『枕草子(まくらのそうし)』の全文「春はあけぼの」を、ふりがなつきの原文・やさしい現代語訳・ポイント解説まで、わかりやすくまとめました。
特に、定期テストや高校入試でもよく出るこの一節を、しっかり理解して得点につなげられるように、「よく出る語句」「古典文法のポイント」「覚え方のコツ」も紹介しています。古文がニガテな人でも、最後まで読めば「けっこうカンタンかも!」と思えるはずです。
テスト勉強のまとめノートとしても使えるように作っているので、まずは気軽に読んでみてくださいね!
目次
1分でわかる!「春はあけぼの」ってどんな話?
「春はあけぼの」は、平安時代の女流作家・清少納言(せいしょうなごん)が書いた『枕草子』の最初に出てくる有名な一文です。
春の朝(あけがた)の美しさを、たった一文で表現しているこのフレーズは、1000年以上前に書かれたとは思えないほど、いまの私たちの感性にもぴったりはまる表現です。
このあとに続く、「夏は夜」「秋は夕暮れ」「冬はつとめて」といった四季の美しさの紹介では、それぞれの季節で清少納言がもっとも「趣(おもむき)」を感じた時間帯が描かれています。
- 春は、夜がほのぼのと明け始めるころの、空の色の変化やたなびく雲が美しく感じられる時間。
- 夏は、夜の涼しさや蛍の光が幻想的に感じられる時間。
- 秋は、夕暮れに色づく空や雁の鳴き声に、しみじみとした情感を覚える時間。
- 冬は、早朝の寒さと雪景色が、ぴんと張りつめた美しさを見せる時間。
このように、それぞれの季節の「一番美しい瞬間」を言葉で切り取るセンスが、『枕草子』の魅力です。
テストで「春はあけぼの」が出てきたら、春だけでなく夏・秋・冬についても、それぞれ“いちばん趣のある時間帯”が選ばれていることをおさえておきましょう。清少納言が見つけた、季節ごとの「美しさのピーク」に注目して読むのがポイントです。
「枕草子」ってどんな本?作者・清少納言ってどんな人?
『枕草子』は、平安時代中期に清少納言という女性が書いた随筆(ずいひつ)です。清少納言は、一条天皇の后(きさき)だった藤原定子(ふじわらのていし)に仕えた女房(にょうぼう)で、宮中での生活や自然のこと、自分が感じた「おもしろいこと」などを、自由な文体でつづりました。
『枕草子』は、「をかしの文学」とも呼ばれ、物ごとの面白さ・美しさ・趣(おもむき)を見つけて言葉にする感性が特徴です。
紫式部とは同じ時代に宮中で活躍していたライバル的存在でした。実は、紫式部の日記の中には「清少納言は、頭はいいけれど、自分のことを利口だと思いすぎている」といった、ちょっと辛口なコメントも書かれています。おたがいの作品に対する意識や性格のちがいが感じられる、今でいう“文学界のライバル関係”だったのかもしれません。
【原文】春はあけぼの|明るくなっていく様子
春(はる)は、あけぼの。 やうやう白(しろ)くなりゆく山際(やまぎわ)、 少(すこ)しあかりて、 紫(むらさき)だちたる雲(くも)の、 細(ほそ)くたなびきたる。
【現代語訳】いちばんやさしい訳で読んでみよう
春は、明け方(あけがた)がいちばんいい。 だんだん白くなっていく山のあたりが、少しずつ明るくなって、 紫がかった雲が、細く横に長くたなびいている。
文ごとのポイント解説|意味と情景をつかもう
春は、あけぼの。
「春は、あけぼの(=明け方)が一番いい」と、春の魅力を最初に提示しています。「は」は係助詞で、「春」を強調しています。
やうやう白くなりゆく山際、
「やうやう」は「だんだんと」「しだいに」という意味の副詞です。山のふち(山際)が、時間とともに白くなっていく様子を表しています。「なりゆく」は「なる+ゆく」で、変化の途中をあらわします。
少しあかりて、
「少し(わずかに)」+「あかりて(明るくなって)」で、夜から朝への移り変わりの一瞬の明るさが伝わってきます。
紫だちたる雲の、
「紫だちたる」は「紫がかっている」という意味。「たり」は状態の継続を示す助動詞で、空に紫色がほんのりと広がっているイメージです。
細くたなびきたる。
「細く」は雲の形、「たなびきたる」は雲が横に長く流れている様子を表します。「たなびく」は雲や煙が空にすーっと横長にのびていく様子を言います。
このように、一文ずつ読むと、春の朝の静かで美しい空の変化が、目に浮かぶように描かれていることがわかります。
【原文】夏は夜|しずけさと光が美しい時間
夏(なつ)は、夜(よる)。月(つき)のころはさらなり、蛍(ほたる)の多(おお)く飛(と)びちがひたる。 また、ただ一(ひと)つ二(ふた)つなど、ほのかにうち光(ひか)りて行(ゆ)くもをかし。雨(あめ)の降(ふ)るさへをかし。
【現代語訳】夏をわかりやすい訳で読んでみよう
夏は、夜がいちばんいい。月が出ているときの美しさは言うまでもなく、たくさんの蛍が飛び交っているのも風情がある。 また、一匹二匹の蛍が、かすかに光りながら飛んでいくのも趣がある。雨が降っている夜でさえも、美しく感じられる。
文ごとのポイント解説|意味と情景をつかもう
- 月のころはさらなり:「さらなり」は「言うまでもない」という意味。月が出ている夜は特別に美しいという前提があります。
- 蛍の多く飛びちがひたる:「飛びちがふ」は、あちこちに飛び交うこと。蛍がたくさん光っている様子が思い浮かびます。
- ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行く:「ほのかに」は「かすかに」。光がちらちらと動いていく様子を想像できます。
- 雨の降るさへをかし:「さへ」は「〜さえ」。雨が降る夜でさえも、しっとりとした趣がある、という意味です。
【原文】秋は夕暮れ|しみじみと心にしみる時間
秋(あき)は、夕暮(ゆうぐ)れ。夕日のさして、山の端(は)いと近うなりたるに、烏(からす)の寝どころへ行(ゆ)くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急(いそ)ぐさへあはれなり。 まいて雁(かり)などの連(つら)ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。
【現代語訳】秋をわかりやすい訳で読んでみよう
秋は、夕暮れがよい。夕日がさして、山の端がとても近く見えるころに、カラスがねぐらへ帰っていくために、三羽四羽、二羽三羽などが急いで飛んでいく様子も趣がある。 まして、雁などが列をなして飛んでいくのが、とても小さく見えるのも、おもしろい。日がすっかり沈んでからは、風の音や虫の声なども、言葉では言い表せないほど風情がある。
文ごとのポイント解説|意味と情景をつかもう
- 山の端いと近うなりたる:「いと近う」は「とても近く」。夕暮れで山のシルエットが強く浮かび上がる情景です。
- 烏の寝どころへ行くとて:「寝どころ」は寝る場所=ねぐら。カラスが帰っていく様子が描かれます。
- 雁などの連ねたるがいと小さく見ゆる:「連ねたる」は「列をなして飛ぶこと」。遠くの空に小さく見える雁の列が印象的です。
- 風の音、虫の音などはた言ふべきにあらず:「はた言ふべきにあらず」は「とても言い表せないほどすばらしい」の意。音による秋の情景が深く感じられます。
【原文】冬はつとめて|寒さの中の美しさを感じる時間
冬(ふゆ)は、つとめて。
雪(ゆき)の降(ふ)りたるは言(い)ふべきにもあらず、
霜(しも)のいと白(しろ)きも、またさらでもいと寒(さむ)きに、
火(ひ)など急(いそ)ぎおこして、炭(すみ)持(も)て渡(わた)るも、いとつきづきし。
昼(ひる)になりて、ぬるくゆるびもていけば、
火桶(ひおけ)の火(ひ)も、白(しろ)き灰(はい)がちになりてわろし。
【現代語訳】冬をわかりやすい訳で読んでみよう
冬は、朝早い時間がいちばんよい。
雪が降っている朝はもちろんのこと、霜がまっ白に降りているのも美しい。
たとえ雪がなくても、とても寒い朝に火を急いでおこして、炭を持って部屋に運ぶのも、冬の朝らしくて風情がある。
昼になって暖かくなってくると、火鉢の中の火も白い灰ばかりになってしまい、なんだか物足りなく感じる。
文ごとのポイント解説|意味と情景をつかもう
- 雪の降りたるは言ふべきにもあらず:「言ふべきにもあらず」は「言うまでもない」=特に美しい情景。
- 火など急ぎおこして:「火をおこす」=寒さの中での生活感が伝わる場面です。
- 炭持て渡るも、いとつきづきし:「つきづきし」は「ふさわしい」。冬の朝らしい風景として描かれます。
- 火桶の火も、白き灰がちになりてわろし:「わろし」は「よくない」「がっかり」という意味。朝の美しさが薄れる様子を対比で表しています。
テストに出る語句・問題まとめ
よく出る古語と意味
- あけぼの…夜明け、明け方
- やうやう…だんだんと、しだいに
- なりゆく…次第に~なっていく(「なる」+補助動詞「ゆく」)
- あかりて…明るくなって(動詞「あかる」の連用形)
- 紫だちたる…紫がかっている(形容詞「紫だつ」+助動詞「たり」存続)
- たなびきたる…長くたなびいている(動詞「たなびく」+「たり」)
よくあるテスト問題の例
Q1. 「あけぼの」の意味として正しいものを選びなさい。
- ア. 日没 イ. 夜明け ウ. 昼間 エ. 夜中 → 正解:イ
Q2. 「やうやう白くなりゆく」の「やうやう」の意味を答えなさい。
- 答え:だんだんと、しだいに
Q3. 「紫だちたる雲の、細くたなびきたる」の表現技法は?
- ア. 比喩 イ. 擬人法 ウ. 対比 エ. 体言止め → 正解:ア(視覚的な比喩)
Q4. 「冬はつとめて」の「つとめて」とはどのような意味か。
- 答え:早朝、朝早く
Q5. 清少納言が『枕草子』で伝えようとしたのは?
- 答え:自然の中の「一番美しい瞬間」や趣(おもむき)を見つける感性
覚え方のコツ|リズムとイメージで頭に入る!
- 音読してリズムで覚える: 「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく…」と何度も声に出してみましょう。
- ゴロで覚える:
- 「やうやう」= ようやく明るくなる → だんだんと
- 「たり」= 存続の助動詞 → 状態が続いている
- イラストで覚える: それぞれの季節の情景を簡単に絵にしてみると、記憶に残りやすくなります。
まとめ|「春はあけぼの」で伝えたいことは「自然の美しさ」
『枕草子』の冒頭「春はあけぼの」では、春だけでなく、夏・秋・冬の四季を通じて、それぞれの最も趣きある時間帯が描かれています。そこに共通しているのは、「自然の美しさ」をとらえようとする清少納言の感性です。
桜や紅葉といったわかりやすい名所ではなく、「空の色が変わる瞬間」「虫の声」「霜や灰の白さ」など、ふとした一瞬の中にある美しさを見つけ出す目。それこそが、清少納言の鋭い観察力であり、この作品の最大の魅力です。
現代に生きる私たちも、自然をよく観察することで、「今ってすごくきれいかも」と思える瞬間があるかもしれません。
テストではもちろん、「美しさの視点」「自然の描写」「四季と時間帯」に注目して読み取ることが大切です。
発展問題にチャレンジ!
① 各季節で取り上げられている時間帯の特徴をまとめよう
- 春:夜明け。だんだん明るくなる空や雲の色合いがポイント。
- 夏:夜。月や蛍の光、涼しさ、雨の音など五感に訴える表現。
- 秋:夕暮れ。雁の鳴き声や空の色、虫の音など「ものさびしさ」が感じられる。
- 冬:早朝。張りつめた寒さ、霜や雪の白さ、火を起こす朝の様子。
② 「山際」「霜」「灰」のそれぞれの「白し」のあり方を考えよう
- 「山際」…春の夜明けに白くなっていく空の端 → 清らかでやわらかな印象の白
- 「霜」…冬の早朝に真っ白に降りた霜 → 鋭く冷たい、張りつめた白
- 「灰」…昼になると火鉢に残る白い灰 → 熱が失われた、さめた印象の白 → 同じ「白」でも、場面によって感じ方や印象が大きく違うことを学ぼう!
③ 自分自身の季節に対する捉え方を四百字程度の文章にまとめてみよう
『春はあけぼの』を参考に、自分の好きな季節の「一番美しい瞬間」を言葉で表現してみましょう。朝、昼、夕方、夜など、どの時間帯でもOKです。自然の様子だけでなく、自分の気持ちや思い出を入れてもOK。書くときは「五感(見る・聞く・におい・手ざわり・気温など)」を使うと、ぐっとリアルになります!