「敵を倒してみたら、年の近い若者だった――」
こんな展開から始まる「敦盛の最期」は、ただの戦いの話ではありません。
このお話に出てくるのは、源氏側の武士・熊谷直実(くまがいなおざね)と、平家の若武者・平敦盛(たいらのあつもり)。一の谷の戦いで直実が敦盛を追いかけて討ち取ったものの、そのあとに起きた出来事がとても切なく、心に残るんです。
古文ってむずかしそうに見えるけど、「人の気持ち」がテーマになっているこの物語は、現代の私たちにもすごく通じるものがあります。
「命ってなに?」「本当に強い人ってどんな人?」――そんなことを考えさせてくれるのが、「敦盛の最期」なんです。
このページでは、原文・現代語訳・テスト対策・覚え方のコツまで、わかりやすく解説します!古文がニガテな人でも、これを読めばばっちりです!
目次
超簡単に!秒でわかる!「敦盛の最期」ってどんな話?
「敦盛の最期(あつもりのさいご)」をギャル風に解説すると、昔の戦(いくさ)のお話なんだけど、ただの戦いじゃないのよ~。
もともとは『平家物語』っていう超有名な古典に入ってるエピで、もうエモすぎて語り継がれてる感じ💫
ざっくり言うとね、源氏の武士・熊谷直実(なおざね)が、戦の途中で平家のイケてる若武者・平敦盛(あつもり)を見つけて、ガチで追いかけるわけ。で、ついに討ち取っちゃうんだけど、その後に「え、めっちゃ若い子だったんだけど……自分の息子と同じ年じゃん……」ってなって、めっちゃ病むの。
つまり、「戦ってなに? 命ってなに?」みたいなガチ哲学入ってくるのよ🥺✨
たった1シーンなんだけど、心えぐられる系のドラマがぎゅっと詰まってるから、読むとマジでくる。
と、こんな感じです。
テストにも出やすいし、「人の気持ち」にフォーカスして読んだら、古文苦手な子でもハマるかも。
「平家物語」ってどんな本?作者や背景は?
『平家物語』は、平安時代の終わりから鎌倉時代のはじめにかけて書かれた、戦いの物語(軍記物)です。
平家と源氏という二つの大きな武士の一族が、日本の支配をめぐって戦った「源平合戦(げんぺいがっせん)」が描かれています。
この物語では、ただ戦いの様子を伝えるだけでなく、「命のはかなさ(無常)」や「人の心の動き」が丁寧に描かれているのが大きな特徴です。とくに「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声〜」で始まる冒頭の一文は、とても有名ですね。
作者ははっきりわかっていませんが、琵琶法師(びわほうし)と呼ばれる人たちが、琵琶を弾きながら語り伝えていたと言われています。そのため、音読してみるとリズムがよく、言葉の美しさがより感じられる古典でもあります。
「敦盛の最期」も、『平家物語』の中の一場面。敵味方という立場を超えて、人と人とが出会い、心が揺れ動く名シーンです。
原文と現代語訳で解説!敦盛の最期は、敵味方を超えた武士の哀しみ
【現代語訳】いちばんやさしい訳で読んでみよう
熊谷次郎直実、敵に押し並べられて、逃げ後れたるを、見つけて追っかける。
→ 熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)は、たくさんの敵の中で、逃げ遅れた一人を見つけて追いかけました。
海へぞ入ると思ふ所に、馬の足を海へ乗り入れて、「汝(なんじ)はいづくへ行く」と、呼ばはれば、
→ その敵が海に逃げようとしているのを見て、直実は馬で海に乗り入れ、「お前はどこへ行くんだ!」と声をかけます。
振り返って、「さてこそ、討たれんずらめ」と、首をぞ差しうつる。
→ 振り返ったその人は「ああ、やっぱり討たれてしまうんだな……」と思って、自分の首を差し出しました。
直実、鎧の袖を引き上げて見れば、十六、七ばかりにて、容顔まことに美麗なり。
→ 直実が相手の鎧の袖をまくって顔を見ると、まだ16〜17歳くらいの若者で、顔立ちがとても美しかったのです。
「こは、いかに。まことに、我が子・小次郎が十六になりたるに、少しも違はず。」
→ 直実は「なんてことだ……。本当に、自分の息子・小次郎が16歳になった姿とそっくりじゃないか」と思いました。
見るにしのびず、「助けん」とこそ思ひつれ、敵に後ろを見するは、武士の恥なりければ、
→ 直実はあまりにかわいそうで「助けたい」とさえ思ったけれど、戦場で敵に背中を見せるのは武士の恥だとされていたので、
ついに首をかいてぞ、討ちたりける。
→ とうとう相手の首をかき切って、討ち取ってしまいました。りの武士――熊谷直実と平敦盛――のやりとりは、ただの敵味方ってだけじゃ片づけられない、グッとくるドラマが詰まってます!
文ごとのポイント解説|意味と情景をつかもう
熊谷次郎直実、敵に押し並べられて、逃げ後れたるを、見つけて追っかける。
→ ここは場面のスタート。戦いのまっただ中で、熊谷直実がひとりの敵を見つけて追いかけるところです。
「押し並べられて」は、たくさんの敵と入り乱れるような状況。緊迫感のある場面です!
海へぞ入ると思ふ所に、馬の足を海へ乗り入れて、「汝はいづくへ行く」と、呼ばはれば、
→ 相手の武者は逃げ場を失って、海に入っていこうとします。そこへ直実が馬で海に入っていくって、かなりの行動力ですよね。
「汝はいづくへ行く」は「おまえ、どこに行くつもりだ!」という問いかけ。直実の声にも必死さがにじんでいます。
振り返って、「さてこそ、討たれんずらめ」と、首をぞ差しうつる。
→ 相手の若武者は、観念したように振り返り、「やっぱり、討たれる運命なんだな……」と思って、自分から首を差し出します。
ここには戦における運命の残酷さや、相手のあきらめの気持ちが静かに表れています。
直実、鎧の袖を引き上げて見れば、十六、七ばかりにて、容顔まことに美麗なり。
→ 直実が相手の顔を見ると、まだ10代半ばくらいの少年。しかも、とても美しい顔立ちだった……。
この瞬間、直実の中に「ただの敵」ではない感情が生まれます。
「こは、いかに。まことに、我が子・小次郎が十六になりたるに、少しも違はず。」
→ なんと、自分の息子と同じくらいの年齢で、見た目もそっくり。
この一言に、直実の驚きと動揺、そして心の迷いが詰まっています。
見るにしのびず、「助けん」とこそ思ひつれ、敵に後ろを見するは、武士の恥なりければ、
→ 助けてあげたいという気持ちと、武士としての名誉の板ばさみ。
ここが、直実の心がいちばん揺れている場面です。「しのびず」は「見ていられない=つらくてたまらない」という気持ち。
ついに首をかいてぞ、討ちたりける。
→ 迷いながらも、直実は相手を討ち取ります。
この「ついに」には、どうしようもない流れの中で、選ばざるをえなかった苦しさがこもっています。
このあとの展開では、直実が出家することを決めたり、「命とは何か」「人を殺すとは何か」を考える場面につながっていきます。
この場面だけでも、直実の心の動きが手に取るように感じられますね。
【人物解説】熊谷直実と平敦盛|二人の立場と心情を知ろう
熊谷直実(くまがい なおざね)|討ったのに、涙が止まらない武士
熊谷直実は、源氏側の武将。戦場では多くの敵と戦ってきた、経験豊かな武士です。
でも「敦盛の最期」では、ただの戦いでは終わらず、「敵を討ったのに、心はズタズタになる」という、ものすごく人間らしい一面が描かれています。
敦盛を討ったあと、直実は「自分の息子と同じくらいの年の子を、自分の手で殺してしまった……」という後悔でいっぱいになります。
その気持ちはあまりにも深く、やがて直実は武士をやめて出家(=お坊さんになること)するほどでした。
つまり直実は、「戦って勝つこと」よりも、「人としてどう生きるか」に気づいた人物とも言えます。
古文って、ただ昔の話じゃなくて、こういう“心の成長”を描いているところがグッときますよね。
平敦盛(たいらの あつもり)|笛をたしなむ、平家の美少年
平敦盛は、平家の若き武士。年はまだ16~17歳とされていて、教養もあり、笛の名手としても知られていました。
戦場でも笛を持っていたという話が伝えられていて、「戦うだけじゃなく、芸や心の美しさも持ち合わせた人物」として描かれています。
そんな敦盛が、戦で命を落とす――
だからこそ、「命ってどういうもの?」「人はなぜ戦うの?」という問いが読む人の心に強く残るんです。
敦盛はセリフが少ないですが、「さてこそ、討たれんずらめ」と首を差し出す場面はとても印象的。
若いのに、すべてを受け入れるようなその姿が、勇気と覚悟、そして静かな美しさを感じさせます。
この二人が出会ったのは、たった一度きり。でも、その出会いが両者の運命を大きく変えてしまいました。
「戦いの勝ち負け」ではなく、「心と心がすれ違った瞬間」を描いたこのシーンが、今も語り継がれている理由なのかもしれません。
よく出る古語と意味
「敦盛の最期」に出てくる古語の中でも、テストや読解でよく問われるものをピックアップ!
意味と一緒に、文中の使われ方も確認しておきましょう。
(なんじ)
→ おまえ、おまえさんという意味の二人称。
文中では「汝はいづくへ行く」とあり、「おまえ、どこへ行くつもりだ?」という呼びかけです。
いづくへ(いずくへ)
→ どこへ。疑問詞です。
「いづくへ行く」は「どこへ行くのか」と問いかける表現。
差しうつる(さしうつる)
→ 差し出す、差し向ける。ここでは「首を差し出す」という意味。
相手が観念して、自ら首を差し出した場面に使われています。
容顔(ようがん)
→ 顔立ち、顔の美しさのこと。
「容顔まことに美麗なり」は、「顔立ちが本当に美しかった」という意味です。
まことに
→ 本当に、実にという強調の言葉。現代語でも使われますね。
「まことに、我が子に少しも違わず」のように使われます。
違はず(たがわず)
→ ちがわない、そっくりだという意味。
直実が敦盛の顔を見て、自分の息子と似ていると気づく場面で出てきます。
しのびず
→ 見ていられない、つらくて我慢できないという気持ち。
「見るにしのびず」は、「かわいそうすぎて見ていられなかった」という意味になります。
首をかく
→ 首を切る、討ち取るという意味。
「ついに首をかいてぞ、討ちたりける」は、直実が相手をとうとう討ち取った場面です。
これらの言葉は、意味だけでなく、どの場面で使われているかもセットで覚えるのがコツです!
テストでは「古語の意味」だけでなく、「どういう気持ちを表しているか」もよく問われるので、情景と一緒におさえておきましょう◎
よくあるテスト問題の例
【問題①】
Q. 熊谷直実が平敦盛を討ったあと、どのような気持ちになりましたか?最も近いものを選びなさい。
(ア)誇らしい気持ちになった
(イ)怒りがこみ上げた
(ウ)深く後悔した
(エ)あまり何も感じなかった
▶ 正解:ウ(深く後悔した)
→ 自分の息子と同じ年ごろの若者を討ってしまい、「見るにしのびず」「助けんと思ひつれ」とあるように、直実の心は大きく揺れ動いています。
【問題②】
Q. 「見るにしのびず」とあるが、これは直実のどんな気持ちを表しているか。最も適切なものを選びなさい。
(ア)相手を見下していた
(イ)相手がうらやましかった
(ウ)相手がかわいそうでたまらなかった
(エ)相手をにくんでいた
▶ 正解:ウ(かわいそうでたまらなかった)
→ 「しのびず」は「我慢できない」という意味。相手を思いやる気持ちが伝わってきます。
【問題③】
Q. 直実が相手の顔を見て「まことに、我が子に少しも違はず」と言ったのはなぜか。
(ア)相手が小さく見えたから
(イ)相手が弱そうだったから
(ウ)相手が息子に似ていたから
(エ)相手が強そうだったから
▶ 正解:ウ(相手が息子に似ていたから)
→ そのことが、直実の心を大きく動かしたきっかけでした。
【問題④】
Q. 「ついに首をかいてぞ、討ちたりける」とあるが、「ついに」の表す心情として最もふさわしいものはどれか。
(ア)しかたなく
(イ)すぐに決断して
(ウ)自信を持って
(エ)うれしそうに
▶ 正解:ア(しかたなく)
→ 助けたいという気持ちもあったけれど、「敵に背を見せるのは武士の恥」という考えから、しぶしぶ討ち取ったという流れです。
テストでは、人物の気持ちや、言葉の意味、理由を問う問題が多く出ます。
本文の流れをしっかりおさえて、気持ちの動きを読み取れるようにしておきましょう!
コツ①:場面を「映画のワンシーン」みたいに想像してみよう
たとえば直実が海に馬を乗り入れて追いかけるシーン――
ここはもう、アクション映画のクライマックスみたいな緊張感!
そのあと相手がふり返って首を差し出す……このギャップが心に残ります。
情景を頭の中で映像化すると、記憶に残りやすいですよ◎
コツ②:「直実=父の気持ち」「敦盛=息子のような存在」で読む
直実が相手を見て「自分の息子と同じだ」と感じたところから、物語が一気に切なくなります。
ただの戦いじゃなく、親としての気持ちや、人間としての苦悩が読みどころ。
そう思って読むと、自然と「人物の心情」も頭に入りやすくなります。
コツ③:ストーリーを5ステップにまとめておく!
「敦盛の最期」の流れをシンプルにするとこうなります👇
- 戦の中、直実が敵を追いかける
- 相手は海に逃げようとするが、追いつかれる
- 相手は観念して首を差し出す
- 直実が顔を見て、我が子のように感じてしまう
- 迷いながらも討ち取ってしまう(=無常)
この流れを頭に入れておくだけで、話の全体像も、気持ちの動きもバッチリ理解できます!
「覚える」というより、「イメージする」「流れをつかむ」ことを意識して読んでみてくださいね!
『敦盛の最期』で伝えたいことは勝ち負けよりも大切なものがあるということ!
『敦盛の最期』は、ただの「戦いの勝ち負け」の話ではありません。
この物語を通して伝えられているのは、命の大切さや、人としての思いやりの心、そしてこの世のはかなさ(=無常)といった、深いテーマです。
熊谷直実は、敵である敦盛を討ち取ったあと、「自分の息子と同じくらいの若さだった」と気づいて、心に大きなショックを受けます。
戦の中で、「人の命を奪う」ということの重さに気づいた直実は、やがて出家して、武士をやめる道を選びました。
💭てかさ、強いとか勝ち負けとかより、大事なのって“心”じゃね?って気づくとこが最高にエモいのよ。
この物語からは、「人を倒すことが強さではない」「本当に大切なのは心のあり方なんだ」というメッセージが読み取れます。
時代は違っても、命や人の気持ちを大事にしようとする考え方は、今の私たちにも通じるものですね。
発展問題にチャレンジ!
① 熊谷直実が感じた「無常」とはどんなものか、説明してみよう
「無常(むじょう)」とは、「この世のすべてはいつか変わる・終わる」という考え方です。
直実は戦の中で、若くして命を落とす敦盛を見て、「命のはかなさ」「戦いのむなしさ」に気づきました。
📝 書き方のヒント:
- 敦盛がまだ若かったこと
- その命が戦であっけなく終わったこと
- 直実の心に起きた変化 などを入れるとGood!
② 「見るにしのびず」の場面から読み取れる、直実の心情の変化を考えよう
直実はもともと、敵を倒すつもりで追いかけていました。
でも相手が若く、美しい少年だとわかると、敵ではなくひとりの人間として相手を見るようになります。
📝 書き方のヒント:
- 「かわいそう」「助けたい」という気持ちが生まれたこと
- でも「武士としての責任」にも迷ったこと
- 感情と立場の間で揺れ動いた心 を意識して書こう!
③ 「いのち」とは何か、あなたの考えを四百字程度の文章にまとめてみよう
この問題は、自分自身の考えを自由に書いてOKです。
「敦盛の最期」を読んで感じたことや、日常生活で命について考えたことをベースにしてみましょう。
📝 書き方のヒント:
- 「命は一度きり」「人を思いやる心とつながっている」など、自分のことばで
- 体験・見聞きしたことを入れると、説得力がアップします!
\Challengeしてみよう!/
これらの発展問題に取り組むことで、「読む・覚える」だけじゃなく、「考える・伝える」力も伸ばせますよ◎