「えっ、これってただの“けんかの話”?」そう思ってスルーしてませんか?
でも実はこれ、平安時代の“漢(おとこ)”たちが見せたプライドと友情、
そして“人を信じる”ことの大切さを描いた、胸アツな名ストーリーなんです。
昔の物語なのに、いまの人間関係にも通じるところがあるから不思議。
感動ポイントも、テストに出る語句もしっかりチェックしていきましょう!
目次
超簡単に!10秒でわかる「袴垂、保昌にあふこと」ってどんな話?
- 登場人物:元盗賊の袴垂と、役人の藤原保昌
- 舞台:都のとある屋敷
- あらすじ:かつて命を助けてくれた保昌に、ピンチのとき再会した袴垂。
でも保昌は、まるで他人のように彼を閉じ込めてしまう…
→じつはこれ、「信じる vs 疑う」が交錯する感動ストーリー!
【原文】袴垂、保昌にあふこと(『今昔物語集』より)
袴垂、保昌にあふこと。 そのころ、盗人の大将軍にて、名をとどめける袴垂といふ者ありけり。 これは、昔、藤原保昌といふ人に助けられて、命を得たりけることありけり。 さてあるとき、都に忍び入りて、物を取りて帰らむとするに、追捕使にあひて、命危くなりぬ。 そのとき、かの保昌がそのあたりにあるよしを聞きて、逃れ入りにけり。 保昌、かれが来たるを見て、すなはち取りおさへて、 「この男、昔より盗人の大将軍なり。しかじかに罪重くして候ふ。いまこれを捕へ申さん」 とて、門のうちに閉ぢこめて、出だすべきやうもなくなりぬ。 かれ、内にありて思ふやう、 「あな、あさましや。昔、命を助けたまひし人にこそあれ。などかく仇にせらるるぞ」 とて、泣き悲しむ。 さて、あるほど経て、保昌、夜更けてのち、かれをひそかに呼び出だして言ひけるは、 「まことに人の聞き及ばましかば、なんぢが命は、さらになかりつべかりつ。 しかれども、われ、なんぢが命を惜しみて、かく人の目を欺き、 門のうちに閉ぢこめて候ひつるなり。いまは人まさに寝入りぬらむ。出でて逃げよ」 とて、出だしつ。 かれ、うち泣きて、いよいよ感涙を流して逃げ去りぬ。 このこと、後に世にあらはれて、人みな保昌が情をほめて、 いよいよその名高くなりにけり。
【現代語訳】袴垂、保昌にあふことをわかりやすく説明
袴垂が、藤原保昌と再会した話。
そのころ、盗賊のかしらとして名を知られていた男に、袴垂という者がいた。
この袴垂は、むかしあるとき、藤原保昌という人に助けられ、命を救ってもらったことがあった。
ある日、袴垂は都に忍び込んで盗みを働き、逃げようとしたときに、追手に見つかって命の危険にさらされた。
そのとき、ちょうど近くに昔命を助けてくれた保昌がいると聞き、その屋敷に逃げ込んだ。
保昌は袴垂がやってきたのを見て、すぐに彼を取り押さえてこう言った。
「この男は昔から盗賊のかしらである。多くの罪を重ねている者だ。これを捕まえて差し出そう」
そう言って、彼を門の中に閉じ込めて外に出られないようにしてしまった。
袴垂は屋敷の中で、「なんてひどいことだ。あの人は昔、命を救ってくれた恩人じゃなかったのか」と思って泣きながら悲しんだ。
しばらくして夜が更けたころ、保昌はこっそり袴垂を呼び出してこう言った。
「誰かに見つかっていたら、お前の命はなかっただろう。でも私は、お前を救いたかったから、人の目を欺いて門の中に隠した。今なら人々も寝静まっている。早く逃げなさい」
袴垂は感動して涙を流しながら逃げていった。
この話はのちに広まり、保昌の深い思いやり(情け)をみな褒めたたえ、その名はさらに高まった。
文ごとのポイント解説|意味と情景をつかもう
- 盗人の大将軍:単なる盗賊ではなく、勢力を持ったリーダー的存在
- あな、あさましや:「なんということだ!」という驚きと悲しみ
- 門のうちに閉ぢこめて:見せかけは捕縛、実際は庇護
→こうした言葉にこめられた人物の感情の揺れを感じ取ろう。
人物解説!袴垂と保昌ってどんな人?
人物 | 特徴 |
---|---|
袴垂 | 盗賊のかしら。恩を忘れず、涙する“情”のある男 |
藤原保昌 | 官人。表向きは冷酷でも、裏には深い思いやりがある |
『今昔物語集』とは?
- 平安時代末期に成立
- 仏教的教訓や世俗的な人間模様を語る説話集
- 短くても教訓・ドラマ性が強いのが特徴
テストに出る語句・問題まとめ
- あふ:会う、再会する
- なんぢ:おまえ
- 情(なさけ):思いやり
- あな、あさましや:なんてひどいことだ
出題されやすい問い:
- 保昌の言動の裏にある意図とは?
- 袴垂が感涙した理由は?
- 「門のうちに閉ぢこめた」行動の意味は?
覚え方のコツは、ストーリーで古文を覚えよう!
- 再会 → 裏切り? → 実は思いやり → 感動
- 表と裏のギャップが最大のポイント!
→感情の流れを追って読めば、自然と覚えられます。
本当の想いは行動の裏にある!
人の心は見た目だけじゃわからない。
そして、本当の思いやりは行動の裏にある。
保昌の行動は、見かけは冷たい。でもそれは命を守るための優しさだった。
1000年前の物語が、いまの私たちにも響くのは、そんな人間の本質を描いているからです。
発展問題にチャレンジ!
- 保昌のとった行動は「裏切り」だったと思いますか?理由も含めて自分の考えを書いてみよう。
- 袴垂が涙を流したのはなぜ?その気持ちを想像して書こう。
- あなたの身のまわりに「思いやりを