高校受験で古文が出題される理由と得点しやすい理由
「古文は昔の言葉だから難しそう」と感じて、後回しにしていませんか。実は古文は、高校受験の国語のなかでも、対策した分だけ点が伸びやすい分野です。ここでは、なぜ入試で古文が出るのか、そしてなぜ得点源にできるのかを、教育アドバイザーの立場からやさしく説明します。
多くの公立高校入試で古文が出題されている
高校受験の国語では、現代文、漢字、作文に加えて、古文が出題される入試が多くあります。出題の形は地域や学校によってさまざまです。大問として独立している場合もあれば、現代文の中に古文の一節が組み込まれている場合もあります。そのため、古文を勉強しないまま本番を迎えるのは大きなリスクになります。
出題の目的は、昔の文章をそのまま読みこなす力を見ることではありません。中学校で学んだ知識を使って、内容をつかめるかを確かめています。教科書で習う『竹取物語』『平家物語』『徒然草』などが、そのまま出たり、近い形で出たりすることも少なくありません。
最初におすすめしたいのは、志望校の過去問を開いて、古文がどんな形で出ているかを確認することです。志望校の出題形式を知ることが対策の第一歩になります。問題文に現代語訳や注釈が付いている学校も多く、すべてを自力で訳す必要がない場合もあります。出題の癖がわかれば、勉強の量も方向も決めやすくなります。
配点が小さく見えても合否を分けやすい
古文の問題は、国語全体の中では配点が10点前後というケースがよくあります。一見すると小さな割合です。ところが、合格者と不合格者の点差は、数点から十数点のあいだに集中することが多いと言われています。この範囲では、古文の数点が合否を分けることが十分にあり得ます。
さらに、現代文は文章が長く、読む力の差が出やすい分野です。短期間で点を伸ばすのは簡単ではありません。それに比べて古文は、覚えたことがそのまま得点に結びつきやすいという特徴があります。ルールと単語を押さえれば、読めない文章が一気に読める文章に変わります。
苦手な人が多い分野だからこそ、少し準備するだけで周りと差をつけられます。数学や英語に比べて、勉強時間の割に成果が見えやすい点も心強い材料です。受験勉強の優先順位を考えるとき、古文はコストパフォーマンスの高い分野だと考えてください。
暗記と読み方のコツで点が取れるようになる
古文で必要になる知識は、大きく3つに分けられます。この3つはどれも、時間をかければ必ず身につくものです。センスや才能はほとんど関係ありません。
- 歴史的仮名遣いの読み方(「ゐ」「ゑ」「かたらふ」などを現代の読みに直す)
- 古文単語の意味(「をかし」「あはれ」「いと」など)
- 主語や助詞の省略を補いながら読むコツ
この3つは、どれも暗記とパターン練習で対応できます。たとえば歴史的仮名遣いは、表にまとめて数日練習すれば、ほとんどの問題で迷わなくなります。古文単語も、中学入試レベルなら数十語を押さえれば十分に戦えます。
「国語が苦手だから古文も無理」という思い込みは、いったん手放してください。現代文が苦手でも、古文だけは得意になった人はたくさんいます。やり方がはっきりしている分野なので、取り組む順番さえ間違えなければ、確実に前に進めます。
古文を読む前に知っておきたい基本ルール
古文が読めない原因の多くは、読み方のルールを知らないだけです。文章が難しいのではなく、見慣れないだけなのです。この章では、読み始める前に押さえておきたい3つの基本を、小学生でもわかる言葉で紹介します。ここがわかれば、古文を見たときの怖さがかなり減ります。
歴史的仮名遣いは「ルールの表」で一気に覚える
古文には、現代と違う仮名の書き方があります。これを歴史的仮名遣いと呼びます。たとえば「いふ」は「いう」、「てふ」は「ちょう」と読みます。見た目が違うだけで、読み方の規則はとても単純です。ばらばらに覚えるより、次の表にまとめて覚えるのが近道です。
| ルール | 古文での書き方 | 現代の読み方 |
|---|---|---|
| 語頭以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」 | かはづ、まゐる | かわず、まいる |
| 「ゐ・ゑ・を」 | ゐる、こゑ | いる、こえ |
| 「au」の音 | いふ、てふ | いう、ちょう |
| 「む」 | あらむ、見む | あらん、見ん |
この表で大事なのは、細かい例外を気にせず、まず4つの型をつかむことです。たとえば語中の「は行」は「わ・い・う・え・お」に変わる、という型だけで、多くの問題に対応できます。読み方を書き込む練習を毎日5分続けると、1週間ほどで自然に頭が切り替わるようになります。
上の表は、入試でとくによく見かけるパターンだけを選んだものです。さらに細かい決まりは、慣れてから足せば間に合います。最初から全部を完璧にしようとしないことが、続けるためのコツです。
古文単語は「よく出る20語」から始める
古文には、現代語と意味が違う言葉があります。ここで単語を知らないと、文章の意味が取れなくなります。ただし、覚える数を欲張る必要はありません。高校受験では、まずよく出る20語ほどを押さえれば、文章の雰囲気がつかめるようになります。
- あはれ:しみじみとした感動、趣がある
- をかし:おもしろい、かわいらしい、趣がある
- いと:とても
- やうやう:だんだん、しだいに
- つれづれ:することがなくて退屈なこと
ここに挙げたのは一部ですが、この5語だけでも『枕草子』や『徒然草』の冒頭がぐっと読みやすくなります。たとえば「やうやう白くなりゆく山ぎは」の「やうやう」を「だんだん」と知っているだけで、情景が頭に浮かびます。
覚え方は、単語を声に出して、短い例文と一緒に読むのがおすすめです。意味だけを丸暗記するより、文の中でセットにしたほうが記憶に残りやすいからです。毎日3語ずつ増やせば、1か月以内に20語を超えられます。少しずつ、毎日触れることが、忘れにくい勉強法になります。
主語と助詞の省略は「誰が」を探しながら読む
古文には、主語がはっきり書かれない文がよく出てきます。さらに「が」「を」などの助詞が省略されることもあります。これが読みにくさの大きな原因です。現代語のつもりで読むと、誰の話なのかが途中で見失われてしまいます。
対策は、文を読むたびに「これは誰がしたことか」と自分に聞きながら進めることです。たとえば『竹取物語』の「翁、竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」では、主語は「翁」です。次の文で主語が書かれていなければ、前の文と同じ人物だと考えられることが多くあります。
慣れるまでは、文章に出てくる人物を丸で囲み、会話文の「」を目印にして読む方法が役に立ちます。「誰が・誰に・何をした」を拾いながら読む習慣がつくと、問題を解く速さも上がります。問題を解いたら、主語の見つけ方を確認して振り返るところまでセットで練習してみてください。
入試に出やすい古文の作品と単元
古文の勉強では、どの作品を重点的に見るかを決めておくと効率が上がります。入試で出題される作品は、中学校の教科書に載っているものを中心に、ある程度かたまっています。この章では、出やすい作品の特徴と、読むときの見どころを整理します。作品ごとの雰囲気がつかめると、初めて見る文章でも落ち着いて読めます。
物語の代表は『竹取物語』と『平家物語』
物語の分野でまず押さえたいのは、『竹取物語』と『平家物語』です。『竹取物語』は、竹の中から見つかったかぐや姫の話で、多くの人がなんとなく内容を知っています。あらすじを先に知っているので、古文の言葉と現代の意味を結びつけやすい作品です。
『平家物語』は、冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で有名です。ここでは「栄えているものも、いつかは必ず衰える」という考え方が語られています。諸行無常という言葉の意味は、問題でもよく問われます。
読むときのコツは、人物の関係を簡単な図にすることです。『平家物語』の「扇の的」の場面であれば、那須与一が弓で扇を射る、という流れを短い一文で説明できるようにしておきます。あらすじと登場人物の動きを自分の言葉で言えれば、内容を問う問題に強くなります。
随筆は『徒然草』と『枕草子』をセットで学ぶ
随筆とは、作者が感じたことや見たことを自由に書いた文章です。代表は『徒然草』と『枕草子』で、どちらも教科書でよく取り上げられます。この2つは、書いた人の考え方がはっきり出るので、作者の気持ちや考えを選ぶ問題が出やすい作品です。
『枕草子』の「春はあけぼの」は、四季の美しい瞬間を短く切り取っています。「春は夜明けがいい」というように、好きなものを好きと言い切るのが清少納言の持ち味です。『徒然草』の「仁和寺にある法師」は、思い込みで失敗する僧の話で、最後に兼好法師の教訓がつきます。
2つを比べるとわかりやすくなります。次の表で整理しておくと、試験前の見直しが楽になります。
| 作品 | 作者 | 特徴 | よく出る箇所 |
|---|---|---|---|
| 枕草子 | 清少納言 | 明るく感覚的で、「をかし」の文学 | 春はあけぼの |
| 徒然草 | 兼好法師 | 出来事から教訓を引き出す | 仁和寺にある法師 |
俳諧と漢文も忘れずに押さえる
古文の範囲には、松尾芭蕉の『奥の細道』も含まれます。冒頭の「月日は百代の過客にして」は、時間は旅人のように過ぎていく、という意味です。旅の中で感じたことを文章と俳句で表していることを押さえておくと、作者の気持ちを答える問題で迷いにくくなります。
漢文は、『論語』や漢詩が中心です。孟浩然の「春暁」は、短くて覚えやすく、入試でも題材になりやすい作品です。漢文には「返り点」という記号があり、これに従って読む順番を入れ替えます。
- レ点は、下の字から上の字へ1字だけ戻って読む
- 一二点は、2字以上離れた字へ戻って読む
この2つを覚えるだけでも、読み順を問う問題にはほとんど対応できます。書き下し文を声に出して読むと、記号の動きが体に入ります。作品の読み方と記号の決まりをセットで押さえてください。
定期テストから高校受験につなげる勉強法
入試の古文対策は、特別な準備を新しく始めなくても、定期テストの勉強の延長でじゅうぶんに進められます。学校で習った作品を、入試を見据えて復習し直すイメージです。ここでは、日々の勉強を無駄にしないための具体的な進め方を紹介します。
教科書の音読と現代語訳の読み比べを日課にする
最初の取り組みとして、教科書の古文を声に出して読むことをおすすめします。古文はリズムのある文章が多く、音読を繰り返すだけで読み方に慣れる効果があります。1日5分でも、続ければ1か月後の読むスピードが変わります。
音読のあとは、教科書の現代語訳や注釈と読み比べます。原文のどの言葉が、訳のどの言葉に当たるのかを線でつなぐ作業です。たとえば「いと」を見つけたら、訳で「とても」になっているのを確認します。この作業で、古文単語の意味が文脈ごと頭に入ります。
ノートにまとめるときは、原文、読み方、現代語訳の3段に分けておくと見直しやすくなります。授業で習った作品を1つ読み終えるたびに、3段ノートを1ページ作る習慣をつけると、入試前にそのまま復習資料として使えます。
問題の型を知って、解き方を固定する
古文の問題には、よく出る型があります。型を知っていれば、本番で慌てずに済みます。代表的なものを、下にまとめます。
- 仮名遣いを現代仮名遣いに直す問題は、先ほどの表の4つの型で解く
- 主語を答える問題は、「誰が」を探す習慣で前後の文から見つける
- 内容を選ぶ問題は、現代語訳や注釈を手がかりに、本文と食い違う選択肢を消す
- 作者の考えを問う問題は、文章の最後の部分に注目する
この4つの型は、問題を見た瞬間に「どの型か」を判断できるようにすることが目標です。型がわかれば、解き方の手順も決まります。過去問を解いたら、間違えた問題がどの型だったかを書き込んでおくと、弱点の傾向が見えてきます。
とくに内容を選ぶ問題は、本文と選択肢を丁寧に照らし合わせる癖が大切です。古文に限らず、国語全体の力にもつながります。
過去問は3回に分けて使い、復習に時間をかける
過去問は、入試が近づいてから一気に解くのではなく、時期を分けて使うと効果的です。目安を、次のように考えてみてください。
- 夏休み前後に、1年分だけ試しに解いて、苦手な型を確認する
- 秋に、志望校の過去問を数年分解いて、時間配分に慣れる
- 入試直前に、間違えた問題だけを見直す
大切なのは、解いたあとの復習に時間をかけることです。解く時間と同じ、あるいはそれ以上の時間を、答え合わせと解き直しに使ってください。間違いの原因を言葉にして書き残すと、同じ失敗を繰り返しにくくなります。
古文の問題文は短いので、1題あたりの所要時間も長くありません。1日1題でも続ければ、2週間で十数題を解き終えられます。続けやすいペースで、無理なく取り組んでください。
古文が苦手なときの塾と教材の選び方
独学で進めていて行き詰まったときは、塾や教材の力を借りる選択肢もあります。ただし、どれを選んでも合うとは限りません。大切なのは、自分の苦手がどこにあるかを見極めて、それに合った手段を選ぶことです。ここでは、塾のタイプや教材の選び方を、具体例を挙げながら説明します。
集団塾と個別指導のちがいを知っておく
塾には、大きく分けて集団指導と個別指導があります。集団指導は、決まったカリキュラムで同じ学年の生徒が一緒に学ぶ形で、早稲田アカデミーなどがこの形を中心にしています。周りの生徒の存在が刺激になり、入試に向けた全体のペースをつかみやすい点が魅力です。
個別指導は、生徒一人ひとりの理解度に合わせて進める形です。個別教室のトライなどが代表的で、古文の基礎でつまずいている場合に、苦手な部分だけをさかのぼって学べるのが強みです。栄光ゼミナールや臨海セミナーのように、集団と個別の両方を扱う塾もあります。
どのタイプが合うかは人によって違います。授業の進度が速くてついていけないなら個別、競い合うと伸びるなら集団というのが一つの目安です。通う前に、体験授業を受けて、先生の説明がわかりやすいかを確かめてください。
通信教育と教科書準拠の問題集を使い分ける
塾に通わない場合でも、通信教育や問題集で対策できます。進研ゼミ中学講座のように、学校の教科書に沿って学べる通信教育は、定期テスト対策から入試対策までを一続きで進めたい人に向いています。
教科書準拠の問題集は、学校で習った作品をそのまま練習できる点が便利です。使っている教科書の出版社に合ったものを選ぶと、授業の内容と無理なくつながります。まずは学校の教科書の範囲を完全に解けるようにすることが、入試対策の土台になります。
選ぶときのポイントを、次の表にまとめました。
| 手段 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 集団塾 | ペースを作りたい人 | 授業が速いと置いていかれやすい |
| 個別指導 | 基礎からやり直したい人 | 講師との相性を確かめたい |
| 通信教育 | 自分のペースで進めたい人 | 続ける工夫が必要 |
高校以降の古文につなげて考える
高校受験で身につけた古文の力は、その先でも役に立ちます。高校に進むと、古文は本格的に学ぶ科目になり、大学入学共通テストの国語でも古文が出題されます。東京大学や京都大学のような難関大学でも、古文は入試の大事な要素です。
中学の段階で、歴史的仮名遣いと古文単語、主語の見つけ方を押さえておくと、高校の学習に入ったときに楽になります。高校受験の古文は、その後の学びの土台にもなります。目の前の入試のためだけでなく、長い目で見ても無駄のない勉強です。
古文は、最初は苦手に感じても、一つひとつ確かめながら進めれば、必ず読めるようになる分野です。今日は教科書を1つ音読する、単語を3語覚える、といった小さな一歩から始めてみてください。
